フェアリー フルマーは駄作機か?

偵察機

「ソードフィッシュは傑作扱いなのにフルマーが駄作扱いなのはなんかもにょる」ってだけの、ただの独り言記事。深くは受け止めないで欲しい。
動画版はこちら→https://youtu.be/PDY5EXswnGk

フルマー

フェアリー フルマーはイギリス海軍初の本格的な単葉戦闘機であり、第二次世界大戦中に空母艦載機として利用された機体である。
最大の特徴は単発単葉機でありながら航法士の居る複座戦闘機であることで、これによって単座機よりも重量が嵩んでしまっていた。
なおイギリス海軍が時代遅れとも言える複座機に拘った理由は、「目印の少ない海上を長距離に渡って飛行するには航法士が必要だ」という至ってもっともなもの
これに対しアメリカや日本の例を挙げ「パイロット一人でも『問題なく』攻撃と帰還が出来た」とする文献が時折見られるが、本当に『問題』は何もなかったのだろうか?長距離の飛行ではパイロットへの負荷は必然的に大きくなるので、「起こる問題よりも得られるメリットの方が大きかった」辺りが適切と思えてならない。
少なくとも誘導機の無い状態では日米ともに航法ミスで少なくない数の機体と乗員が喪われている。
ただし複座機が同伴している場合は誘導することは可能だった

ヴィッカースK機関銃

なお一部の機体は航法士席に旋回機銃としてヴィッカースK機関銃が現地改修で積まれたらしいが、写真は見つからなかった。
また一部文献によると、航法士には旋回機銃の代わりにトンプソン短機関銃が支給されたとされている。他にも敵を惑わせるために後部座席から信号銃を撃ったり、ゴムバンドでまとめたトイレットペーパーを投下し気流で「炸裂」させたりしたらしい。

一方重量増加による性能の低下は否定出来ず、シーファイアやシーハリケーン、マートレットなどに早々に置き換えられてしまったのは事実だ。
ただし航続距離に関してはシーファイア、シーハリケーンよりフルマーが優れているのは忘れないで欲しい。
これは攻撃機などをエスコート(護衛)する際には非常に重要な性能なのだ。

シーグラディエーター

ここで前任者兼同期のシーグラディエーターと性能を比較して見よう。

流石に最高速度はフルマーが優っている…と言いたいところだが、一部の文献ではフルマー Mk.Iの最高速を398km/hとしているので、その場合はどっこいどっこいである。
Mk.Iのエンジンの馬力も1080とMk.IIより220も低い。
とはいえ複葉機は単葉機より空気抵抗が大きいので、急降下性能はフルマーが優れているだろう
また航続距離、武装もフルマーが勝る。
一方上昇率と上限高度はシーグラディエーターが勝る。
この事から一般的な単葉機と複葉機の関係であると言え、格闘戦ではシーグラディエーターに、その他の戦術ではフルマーに分があると言えそうだ。実際フルマーはシーグラディエーターよりマシとする文献も見られ、置き換えも進められた。
もう一つフルマーが置き換えた艦上戦闘機としてはブラックバーン ロックがあるが、そちらとの性能差は語るに及ばずであろう。

また降着装置が非常に頑丈だったらしく、かなり乱暴な着艦をしても大丈夫だったという。アレスティング・フックは特に頑丈で、甲板から滑り落ちたフルマーをフックだけで支えていたという話すらある。
ここでイギリス海軍が戦った相手が海上航空戦力に難のあるドイツ軍やイタリア軍だった事を思い出して欲しい。
例えば1941年5月8日のアークロイヤル及びフォーミダブル艦載機とイタリア空軍及びルフトバッフェとの間の戦闘結果(Mediterranean Air War, 1940-1945: Volume One: North Africa, June 1940-January 1942, p182-185より)では

イタリア軍の損耗
4 × SM.79 撃墜
2 × CR.42 撃墜

ルフトバッフェの損耗
1 × Ju88 撃墜
4 × He111 撃墜
2 × Bf110 撃墜(うち1機は戦闘による損傷が原因で着陸に失敗)
1 × Bf110 損傷
1 × Ju87 撃墜
1 × Ju87 損傷

イギリス艦載機の損耗
2 × フルマー 撃墜(うち1機は爆撃機の防護機銃による)
2 × フルマー 着艦失敗
1 × フルマー 天候不良で喪失(戦闘とは無関係)
6 × フルマー 損傷

と、相手が双発機や複葉機とはいえ陸上機の護衛付きである爆撃機編隊に対し善戦している。(但し、これには母艦からのレーダーによる補助の効果も含まれている
これがBf109などの陸上単発単座単葉戦闘機相手なら結果は変わっただろうが、それは空母艦載機の宿命でもあるのでフルマーに限った話ではないだろう。
そんなフルマーは製造数600に対して撃墜数112、撃破数80と、英国艦隊航空隊の戦闘機としてはトップのスコアを持っていたりもする
「戦果に恵まれない」とか言われることもあるが、別にそんなことはないのだ。
また複座故に偵察への適性も高く、かのビスマルク追撃戦では空母ヴィクトリアスから発艦したフルマーはソードフィッシュで構成された攻撃隊のために護衛と偵察を行ない、その結果ソードフィッシュが魚雷を命中させることに成功している。
この偵察は意外とバカに出来ず、一連の追撃作戦中には友軍艦をビスマルクと誤認して攻撃するアクシデントがあったりもした。
そんなこともあってか戦闘機としては後輩たちに置き換えられた後も、戦術偵察機として運用されたという。
なお一部は夜間戦闘機や標的曳航機とされたようなので、機体の拡張性も悪くなかったのかもしれない。

以上からフルマーは決して駄作機ではなく、日米には劣るものの必要最低限の性能を持った空母艦載機であると分析するものである。
傑作機であるかはまた別の問題だけどね(

・参考文献
wikipedia日英ポーランド語版
https://www.armouredcarriers.com/fairey-fulmar-operational-history/ https://airpages.ru/eng/uk/fulmar.shtml
https://www.valka.cz/Fairey-Fulmar-t40359
https://www.valka.cz/topic/view/40358
http://www.airwar.ru/enc/fww2/fulmar.html https://web.archive.org/web/20180105084505/http://www.fleetairarmarchive.net/Aircraft/Fulmar.htm
https://hushkit.net/2020/03/24/fairey-fulmar-how-an-absurd-lumbering-thing-became-britains-top-scoring-naval-fighter/ http://www.historyofwar.org/articles/weapons_fairey_fulmar.html http://www.airvectors.net/avfyfly.html#m3
https://www.classicwarbirds.co.uk/british-aircraft/fairey-fulmar.php https://en.wikipedia.org/wiki/Carrier_aircraft_used_during_World_War_II https://airpages.ru/eng/uk/glad.shtml http://www.airwar.ru/enc/fww2/sgladiator.html

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