Wikipedia日本語版が頼りにならないからまた作った日本語資料の少ない艦載対空砲シリーズ。
今回はオチキスM1929 13.2 mm機関銃(仏)と、そのバリエーションであるブレダ モデル1931(伊)について。
※一部記述を改訂しました。
・オチキスM1929 13.2 mm機関銃
1929年にオチキス社で設計され、その後世界中で使われた重機関銃。
その開発の歴史は1920年代後半まで遡る。
当時オチキスでは13.2 mm、25 mm、37 mmなど様々な口径の対空砲が研究されていた。
それらは全て作動方式がガス圧式で、これは一次大戦中に作られた8 mm弾を使用するオチキスM1914機関銃で高い信頼性が証明されていたことによるらしい。
当初は13.2×99 mm弾を使用する予定だったが、1935年に13.2×96 mm弾に改められた。
ほとんどの個体は写真の通り、上面から湾曲した弾倉(30発装填)で給弾された。
カタログ上の発射速度は毎分450発だが、実際には弾倉の交換にかかる時間もあるので実用値としては毎分200から250発だった。
銃架は用途に合わせて様々なものが用意され、対空用では単装、連装、四連装かつ仰角を大きく取れるものが、陸用重機関銃としては三脚や背の低いバイポッドがよく用いられた。
しかしフランスの歩兵科司令官(infantry commander)は、このクラスの弾薬が流れ弾として落下して来た場合は友軍歩兵に被害が出かねないことから対空火器としての受け入れを拒否した。
これには命中しなかった場合自爆して地上への被害を軽減できる自己破壊弾が使用できる、より大口径の対空火器を求めた側面もあるらしい。
しかし友軍への被害が出る恐れがない海軍では幅広く使われたほか、騎兵隊の装甲車輌の一部にも搭載された。
また空軍では飛行場を始めとした重要施設に近接防空火器として本銃を”mitrailleuse de 13.2 mm CA mle 1930″(英”machine gun 13.2 mm CA 1930″:CA 1930 13.2 mm機関銃)の名で使用した。
これには大きく分けて二つのバージョンがあり、一つは対空対装甲両用の単装銃架に載せたものだった。
この銃架は二輪の付いた牽引式のもので重量は117 kg、銃と合わせると155 kgとなった。
対空射撃に用いる場合は銃が取り付けられたスイングアームを上向きにロックし、対地射撃に用いる場合はアームを折りたたんでバイポッドを伸ばす事でそれぞれの目的に適した体勢にできた。
移動時にはコンパクトに折り畳まれ、馬または砲手によって牽引される。
もう一つは対空専用の座席付き三脚で、対空照準器が基本装備されていた。
単装用と連装用があり、前者は本体120 kg、銃込み160 kg。後者は本体225 kg、銃込み300 kgだった。
フランス、イタリア、日本の様々な海軍艦艇に連装、四連装銃架で搭載された本銃は第二次世界大戦の初期にも運用された。
しかしイギリスにおける.50ヴィッカース機銃と同様に、13 mmクラスの機銃では対空射撃に使うには射程・威力共に不十分で有効性は低かった。
それもあってリュッツオウやル・テリブルなど一部のフランス艦艇に搭載された本銃は、アメリカでより強力なエリコン20 mm機関砲に置き換えられ姿を消していった。
イタリアにおいては後述する「ブレダ モデル31」として水上艦艇や潜水艦、装甲列車の対空火器として運用され、一部は戦後にもパトロール艇の武装として使用された。
スペイン海軍もスペイン内戦中の1935年12月に購入しており、1939年以降は自国で弾薬の製造も行なったという。
日本では陸軍に「『ホ』式十三粍高射機関砲」の名で準制式採用、海軍には「保式十三粍機銃」の名で輸入された後に「九三式十三粍機銃」の名で制式採用されている。紛らわしいな
ちなみに「『ホ』式」及び「保式」は「ホチキス(オチキス)製」という意味。「毘式(ヴィッカース)」とか「モ式(モーゼル)」みたいなアレ。
基本的にモノは一緒なので、時折両者が混同されたり「九三式十三粍重機関銃」みたいな存在しない名称が生まれたりするので注意。
一方で陸上での運用はマチマチで、ベルギーのT-15戦闘車やフランスのAMD 35軽戦車、自由フランス軍の自走銃架などに搭載された
また日本の九二式重装甲車にも搭載されたとする資料もあるが、これが搭載する「九二式車載十三粍機関砲」は使用弾薬こそ共通であるものの日本の独自開発とする説とホチキスのライセンス生産&マイナーチェンジ版であるとする説があるため詳細は不明。『ホ』式を試験的に搭載した可能性も否定できない。
ただし後者については「南部銃製造所が関わった」との記述も幾ばくか見られるので、九二式重機関銃(口径:7.7 mm)と混同している可能性もある(特に外語文献
・運用国
ベルギー
ブラジル
フランス
ナチスドイツ:鹵獲品をMG271(f)の名で運用
ギリシャ
イスラエル
イタリア
日本:名称は先述の通り
ポーランド
中華民国
ルーマニア:フランス降伏後の余剰品をドイツ経由で入手したというが、詳細不明
ユーゴスラビア
その他、運用はしなかったものの試験は行なった国が多数。
・諸元(オチキス)
重量:37.5 kg
全長:1.67 m
銃身長:1 m
弾薬:13.2×96 mm オチキス
口径:13.2 mm
作動方式:ガス圧式
俯仰角:-10°から+90°
水平旋回:360°
発射速度:450 rpm(サイクル), 200-250 rpm(実用)
銃口初速:800 m/s
有効射程:4200 m(対空)
最大射程:7.2 km@45°
給弾方式:マガジン(30発)
・ブレダ モデル1931 13.2 mm機銃
二次大戦中にイタリア海軍と陸軍で幅広く使われた重機関銃。
海上では軽対空火器、陸では車載機銃として使われた。
また戦後に一部の銃がパトロール艇の武装となった。
フランスのオチキス M1929機銃をライセンス生産したもので、ライセンスの期限が切れた後もブレダ社によって製造された。
よって使用弾薬は13.2×96 mm、作動方式はガス圧、空冷式、銃身に放熱フィン有り、上面の湾曲マガジン(30発)で装填、基本性能と信頼性は共に高かった…と、ほぼほぼ原型のオチキスと同じ特徴。
正直項目を分ける必要がなかったかもしれない(
単装ないし連装の銃架で様々な艦船に搭載され、潜水艦用では普段は格納して必要な時だけ展開するものもあった。
車載機銃としてはフィアット M14/41やフィアット M15/42の指揮戦車型に近接防空火器として搭載されたものの、やはり13 mm級機銃では対空火器としては有効性が低く、次第にブレダ モデル35 20 mm機関砲に置き換えられた。
またブラジルに輸出されたL3系列の豆戦車の一部にも搭載されたという。
・諸元(ブレダ)
運用期間:1931-1950年
設計:オチキス
設計年:1929年
製造者:ブレダ
生産開始:1931年
重量:47.5 kg
対空銃架込み総重量:370 kg(単装), 695 kg(連装)
全長:1.65 m
銃身長:1 m(76口径)
オペレーター:1名
使用弾薬:13.2 ブレダ(オチキス弾と同仕様)
弾薬重量:112-120 g(実包), 42-51 g(弾頭)口径:13.2 mm
俯仰角:-5°から+85°
水平旋回:360 °
発射速度:400-500 rpm(サイクリック), 200-250 rpm(実用)
銃口初速:805 m/s
有効射程:2 km@45°, 3.98 km@85°
最大射程:6 km@45°, 4.2 km@80°
給弾方式:マガジン(30発) ※20発のマガジンがあったという説も
装甲貫徹能力:20 mm@400 m
・参考文献、画像引用元(Hotchikiss M1929)
https://en.wikipedia.org/wiki/Hotchkiss_M1929_machine_gun
http://www.navweaps.com/Weapons/WNFR_13mm_aamg.php
・参考文献、画像引用元(ブレダ)
https://en.wikipedia.org/wiki/Breda_Model_1931_machine_gun
http://www.navweaps.com/Weapons/WNIT_132-757_m1931.php
https://www.worldwar2.ro/arme/?article=329
https://modernfirearms.net/en/machineguns/italy-machineguns/breda-m1931-2/
http://www.municion.org/13_2x99/13_2x96.htm
・ 九二式車載十三粍機関砲について
wikipedia日英露の「九二式重装甲車」「九二式重機関銃」「
九二式車載十三粍機関砲」「ホ式十三粍高射機関砲」のページ及びアジア歴史資料センター、http://combat1.sakura.ne.jp/92SHIK-S.htm
などを参考にした
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