無人島に何を持っていくかって話(作:ストロー)

「突然なんだけどさ、無人島に何か1つだけ持って行けるとしたら、何持ってく?」
とある放課後の高校、一人の少女が友人に唐突な話を切り出す
「え…なにそれ」
「昨日テレビで芸能人が無人島でサバイバルするヤツやっててさ?」
「まったく、すぐ何にでも影響を受けるんだから…」
いつも通りな調子の少女に、話しかけられた友人は溜息をつく
「いいからいいから、何持ってく?」
「アメリカ合衆国」
「スケールでかっ!?っていうかズルっ!?個人で持ち運べるモノにしてよー」
友人がいつも通り適当にあしらうと、いつも通りオーバーなリアクションが返ってくる
「そういう詩織は何持ってくのさ?」
やれやれとばかりに少女…詩織に質問を返す友人
「んー…ライター」
「普通…」
あまりに平凡な詩織の答えに、食い気味に反応してしまう友人
「美希が普通じゃないだけ!火起こしって大変なんだよ!?」
「それにしたって普通過ぎて面白くない」
その細い身体の一体何処から出て来るのかというほど大きな詩織の声に、
怯むことなく友人…美希は淡々と突き放す
「もう!そんなこと言うなら美希もちゃんと考えて」
「そうね…」
「ほーらー、はーやーくー」
急かす詩織を軽くあしらいつつ、少々不本意ながらしばし美希は考え込む
「…決めた」
「え、なになに!?」
どこか悪戯げに微笑む美希に、詩織は前のめりになって尋ねる
「シオリ」
ちょっと困らせてやろう、そう思い敢えて抑揚を曖昧にして答える美希
「…え?」
予想通り困惑する詩織を見て内心ほくそ笑む
「シ、オ、リ…」
畳み掛けるように俯向き気味の流し目で美希は続ける
「それって…」
言葉を切り、美希を見つめる詩織
しばしの沈黙が二人の間を流れる
最初こそ悦に入っていた美希だったが、何とも言えない雰囲気に段々と焦りを募らせる
耐え切れなくなった美希が取り消そうとした丁度その時、詩織が口を開く
「…本に挟むやつだよね?無人島に本無いよ?なんで栞だけ?」
「…」
すっとぼけた詩織の答えに、口を開けたまま静止する美希
「…!!!」
直後、真っ赤になって顔を背ける
「もしもしー、美希さんー…?」
美希の顔を覗き込もうと背を伸ばす詩織だったが、美希は必死に顔を逸らし続ける
「ねーえー、なーんーでー?」
「…その方が退屈しないって思っただけ」
執念深く追い続ける詩織に、美希は絞り出すように言葉を紡ぐ
「…?」
「ああもう!この話はこれでお終い!」
万策尽きた美希は勢い良く立ち上がり、乱暴に鞄を掴んで逃げるように走り去る
「えー!あ、ちょっと待ってよー!」
慌てて追いかける詩織
「うっさい!着いて来んなー!」
走る2つの人影が、放課後の校門へと消えていった

 

 

まうお:短いが纏まりがある。人物の行動や舞台にもっと動きがほしいところ。