雨-mauo「降水確率30%」

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その日の天気は曇り。
雨が降りそうで降らないこの天気を雫はうっとおしくおもっていた。
「…家に帰るまで降らなければいいけど。」
雫は一人そう呟いた。
「雫ちゃーん!」
不意に雫は後ろから声をかけられる。
誰だろう?と思う前から雫はその声の主が分かっていた。
彼女にとってはもう十数年も聞き続けた声だ。
「一緒に帰ろッス!」
「いいけど…大きな声で呼ぶのはやめてくれる?」
二人は回りにいる下校中の学生たちの注目を集めていた。
雫は注目を集めることが好きではない。
「分かったッス!」
再び大きな声が辺りに響いた。
「…もういいよ。早く帰ろう、太一。」

「それで、今日は体育の時間にソフトボールをしたんスけど…。」
太一の話を聞き流しながら雫は足早に帰り道を歩く。
「…あれ?どうしたんスか?」
太一は急に話をやめた。
「どうしたって…?どうもしないけど?」
「いやいや、だって今日はなんか足早ッスよね?」
気づくと太一は雫より半歩ほど後ろにいた。
「ああ…雨が降りそうだからね。ちょっと急いで帰ろうと思って。」
雫は空を見上げた。
「そういうことッスか。でも今日は大丈夫ッスよ。」
太一は携帯を雫に見せた。
そこには今日から一週間の天気予報が写されていた。
「今日はこの後、雨は降らないって予報ッスから。」
確かに、そこには今日の降水確率が0%と書かれていた。
「そっか、なら大丈夫そうね。」
雫は安心したように呟く。
ふと気になって、雫は次の日の天気を見た。
「あ、明日の降水確率30%ね。」
「ホントッスか?なら明日は雨が…」
「降るわね。」「降らないッスね。」
二人は同時に言った。
「へー…それで太一くんと賭けを?」
次の日の昼休み、雫は友人の妙子と昼食を取りながら昨日の話をしていた。
「『30%だったら半分以上の確率で降らないじゃないッスか!』ってさ。」
雫は太一の真似をして言った。
「あはは、まぁただの確率ならそう考えるんだけどね。降水確率ってなんか信用できないし。」
二人は窓の外に目を向けた。
既にどんよりとしている空からは今にも雨が降りそうだった。
「これなら放課後までには降りそうね。」
雫は昼食のあんパンをかじりながら言った。
「そういえば、賭けってことは太一くんと何か賭けてるんでしょ?何を賭けてるの?」
妙子のその言葉に雫はあんパンを頬張りながら固まった。
「あれ?おーい…雫ちゃーん?もしもーし?」
それからしばらくして、雫は話始めた。
「…あたしが勝ったら何でも言うこと聞いてくれるって。」
「へぇ…太一くんも大きく出たね。で、雫ちゃんが負けたら?」
「…ト」
「は?」
「だから…デートしてくれって。」
雫はうつむきながら小さな声で言った。
「なぁんだ、今さらじゃない。あんたたち幼馴染みでしょ?今までだって一緒に出掛けたりしてるんじゃないの
?」
妙子は期待はずれだと言わんばかりにそう言った。
「でも、ちゃんとしたデートってしたこと無いしどうすればいいか分かんないし。」
「それなら断っちゃえば良かったんじゃないの?その賭け。」
「だって…一応あたしの方が年上だし。持論は曲げたくないって言うか…。」
「負けを認めるのがイヤだったと。」
否定しようとして雫は顔をあげた。
妙子は楽しいおもちゃを見つけた子供のようにニヤニヤしていた。
「ああ、もうかわいいなぁ。」
雫は頭を抱えられてなで回された。
「ちょっ…やめて。」
雫はその行為事態は嫌いではなかったが、妙子の豊満な体つきと自分の体つきをイヤでも意識させられるから複雑な気分になるのだった。
「まったく、あいつも私なんかのどこがいいのか…」
妙子から解放された雫は乱れた髪を指で解かしながら呟く。
「大丈夫よ、雫は可愛いって。」
「なんか適当じゃない?」
友人の適当な言いぐさを雫は恨めしく思った。

放課後、雫と太一は生徒玄関の前で待ち合わせの約束をしていた。
「今日はまだ降ってないッスよね?」
雫と会うと太一は明るい笑顔でそう言った。
賭けのタイムリミットは今日の放課後まで。
雫の予想に反して、雨は降らなかった。
「そうね…きっと降ると思ってたんだけど…。」
「昨日、てるてる坊主を1000個も造った甲斐があったってもんッスよ。」
あの後そんなことをしていたのかと、雫は感心すると共に呆れてもいた。
「んじゃ、今日はデートッスね。」
そう言って、太一が一歩外に足を踏み出した瞬間。
「…あれ?」

「まさか、こんなにすぐ大雨になるなんてね…。」
二人が帰ろうとした直後、外は大雨になっていた。
「ねぇ、いい加減元気出しなよ。太一。」
太一の気分は今の天気のように急激に沈んでいた。
「…帰ったらあのてるてる坊主共の首を切ってやるッス。」
「そんな物騒な…ほら、帰るよ。」
そう言って、雫は太一を引き起こす。
「ん?」
雫は太一が傘を持っていないことに気づいた。
傘はどうしたの?そう聞こうとして雫は察した。
「…太一、賭けはあたしの勝ちよね?約束通り一個お願いを聞いてもらえる?」
「ああ、そッスね。いいッスよ。」
太一は力なく答えた。
「んじゃ、はい。」
雫は太一に自分の鞄を渡した。
「荷物持ちッスか?」
「そう、早く持って。」
「…しょうがないッスね。」
太一は渋々、鞄を受けとる。
「あ、そういえば俺、傘持ってきて…」
「これも。」
太一が言い終わる前に雫は傘を渡した。
「え?」
雫は太一と腕を組んだ。
「ほら、早く。」
「…俺、雨の日は嫌いなんスけどちょっと好きになれそうッス。」

・メンバーの感想

straw:話自体は綺麗にまとまってて良かったと思うから、もう少し短めに纏められればより良いかなーって

tatsunoko:良い結末で良いと思います(語彙不足)

20km:話がわかりやすくて良かった。太一くんは少しうっとおしい印象だったが、先輩の方は可愛いと思った。