シュピタルニー Sh-37機関砲

航空機関砲
Sh-37

なぜかwikipediaに日本語記事がないので作った(記事作成時点)。
ソ連の37 mm航空機関砲だよ。

61-K 対空機関砲

爆撃機の装甲化や航空機全般の高速化、それに伴って敵機を攻撃出来る時間が短くなっていくことへの対策として、ソ連では大口径機関砲の開発が盛んに行われていた。
このSh-37もその一つで、61-K 37 mm対空機関砲と同じ弾を使う航空機関砲というコンセプトで開発された。
もっとも流石に陸用の対空機関砲と同等の強度を持たせる事は困難だったため、規格こそ同じものの減装弾が使われた。

MPSh-37 (21発装填)
40発マガジンのShFK-37

ShKASやShVAKの開発で知られるOKB-15のボリス・シュピタルニーが開発担当で、モーターカノンタイプのMPSh-37とガンポッドタイプのShFK-37がある。
・MP:Motornaya Pushka(モーターカノン)
・FK:Fyuzelyajno-Krylevaya(胴体-主翼)

37 mm MPShを搭載したLaGG-3-34

1941年初頭に試作型がLaGG-3にモーターカノンとして搭載され、試験された。
この機関砲はマガジン込みの重量が208.4 kgに達するデカブツで、同じ37 mm機関砲であるM4機関砲(アメリカ)やVickers Class “S” 40 mm機関砲(イギリス)より重い。
※なお、より対戦車性能を追求したドイツのBK 3,7 37 mm機関砲は300 kg近くあるもよう。
この試験での発射速度は184 rpmだったが、ある程度変更は出来る様子(諸元を参考。

37 mm MPShを搭載したYak-7-37

その後Yak-7にもモーターカノンとして搭載され、そのタイプはYak-7-37と呼ばれる。
この型では機関砲の長さからコックピットを40 cm後方に移す必要があり、重量はYak-7Bより200 kg重くなった。
これらのLaGG-3やYak-7は少数が生産、配備された。
その威力は確かなもので、敵の戦闘機を一撃で撃破したという。

ShFK-37を搭載したIL-2 その1

1941年半ばにはIL-2への搭載も試験された。
流石のIL-2でもこのサイズの機関砲をマガジンまで含めて主翼内に搭載することは出来ず、特設のガンポッドに搭載して両主翼下に装備した。
マガジンの装弾数は一門当たり40発とされる。
これによって一門当たりのマガジン込み重量は302.5 kgに増加した。
発射速度は169 rpm、砲口初速は894 m/sまで落とされた。
にも関わらずこの機関砲の反動は強烈で、急降下中に射撃すると反動でピッチダウンさせる力が働き、それによって通常の反動がもたらす以上の散布界の悪化を引き起こした。
また空気抵抗と重量の増大は飛行特性の悪化や最高速度の低下、上昇率の悪化、そして滑走距離の増大を引き起こした。
※海面高度での最高時速は372 km/h、高度2500 mでは409 km/h
※通常は高度1500 mで410 km/hらしい

ShFK-37を搭載したIL-2 その2

それでも1942年12月から翌年1月にかけて少数が生産されて実戦に参加し、距離400 m以下であればドイツ戦車に対して一定の有効性を示すことができた。
これは軽戦車のみならず、中戦車に対しても貫通の可能性が見込めたという。
しかし飛行特性の悪いこの機体で的確に敵戦車の弱点を狙う事は困難を極めた
おまけに左右の機関砲の同期がお粗末で、継続的な射撃は命中率の悪化を意味していた。
※脚注:反動の強い機関砲が同期せずに射撃すると機体自体がぶれるので命中率が悪化する。
よって多くても2,3発のバースト射撃で敵を仕留める必要があった。
さらに悪い事にSh-37自体の信頼性も低く、給弾不良などが頻発した。
また先ほどの反動の問題があるため、片方の機関砲が撃てなくなることは、もう片方の機関砲を安全に射撃することが不可能になる事を意味している。
※重量バランスが崩れて制御困難になったり、最悪機体がスピンする
このためSh-37が搭載したIL-2が量産される事はなかった。

NS-37を搭載したIL-2

最終的に同じ弾を使う新型のNS-37が登場すると、早々に置き換えられ、忘れられていった。
ちなみにNS-37の発射速度は250 rpm、重量170 kgとSh-37より基本スペックが優れている。

MPSh-37とM-105エンジン

・諸元(Sh-37)
設計者:ボリス・シュピタルニー
製造社:第74工場
口径:37 mm
使用弾薬:37×198 mm弾(HE:735 g, API:760 g)
給弾方式:マガジン(クリップ)
作動方式:ガスオペレーション
全長:3096 mm(マズルブレーキ込みで3610 mm)
砲身長:2060 mm
総重量(マガジン込み):375 kg(初期)、302.5 kg(生産型)
※LaGG-3での搭載試験時の重量は208.4 kg
発射速度:170(ShFK)、185 rpm(MPSh)
装弾数:5(試作時)、21(MPSh)、40(ShFK)
製造数:240以下
砲口初速:870-900 m/s
設計1940-1941
製造1941-1942

・参考、画像
https://en.wikipedia.org/wiki/Shpitalny_Sh-37
http://www.airwar.ru/weapon/guns/shfk37.html
https://en.wikipedia.org/wiki/Boris_Shpitalniy
https://en.wikipedia.org/wiki/Ilyushin_Il-2
http://ram-home.com/ram-old/gun-sh37.html

・せっかくなので知り合いのサイトも
https://krasnaya-biblioteka.jimdo.com/%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F%E9%96%A2%E9%80%A3/wwii%E3%82%BD%E9%80%A3%E7%A9%BA/%E3%82%BD%E9%80%A3%E4%B8%BB%E5%8A%9B%E6%88%A6%E9%97%98%E6%A9%9F%E3%81%AE%E7%81%AB%E5%99%A8%E3%81%AE%E5%A4%89%E9%81%B7/

・このページもどうかな?
http://teambtrb.com/2017/05/20/ww2aircraftguns/

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