ポンポン砲は英国面か?

ネタ扱いされたり英国面扱いされたり果ては失敗作扱いされたりなのに、割と広く長く使われたポンポン砲
結局のところ対空兵器としてどうなのか?
その実態に迫るべく、取材班はNavWeapsのページに飛んだ…

ところで一口にポンポン砲と言っても
QF1ポンド砲
QF1 1/2ポンド砲
QF2ポンド砲
…と複数の砲についての通称なんだけども、今回取り扱うのは艦対空兵器であるヴィッカースQF2ポンド砲についてだけだから勘弁な

砲弾の口径を悪しきヤード・ポンド法からメートル法に直すと40mmなので榴弾の破壊力は充分
具体的には炸薬量にして71gある
※参考までに1.1インチ砲の28mm弾(HE-T)で17g、我らが帝国海軍の25mm通常弾(HE)で10g程度である。やはり口径は正義
なお元を辿ると歩兵砲からの流用発展なので曳光弾などない
繰り返す、曳光弾はない
少なくとも正式採用された弾にはない
代わりっちゃなんだけど徹甲弾と半徹甲弾(SAP)はある
前者は炸薬の無い純徹甲弾で、後者は23gの炸薬が入っている
魚雷艇を蹴散らしたりするには良いと思うよ、うん

同じQF 2ポンド砲でも戦車に積んであるのはオードナンス製の別物
オードナンス砲が使うのは薬莢長が二倍近くある40×304mmR弾(ヴィッカースは40×158mmR)なので初速が違うし互換性もない
某戦車ゲーのアレは…うん…架空戦記みたいなもんだよ…

・画像:37~40mm弾の大きさ比較


・QF 2-pounder Mk.II


1915年3月に海軍へ導入された水冷式対空機関砲
元祖ポンポン砲ことQF1ポンド砲(29口径37mm)をベースに大口径化したMk.Iに若干の改良を加えたもの…らしい(Mk.Iは資料が少なく詳細不明)
なので構造としては先祖にあたるマキシム機関銃に近く、作動方式はショートリコイル式
この「スケールアップ」はあまり完成度の高いものではなく、連射機構が軽すぎたり頑丈さに欠けたりして作動不良を引き起こしやすかった
加えて初期のモデルでは25発(35発とも)の布製ベルトで装弾したために、生地が伸びたり破れたりでジャムが多かった
というわけで一般的にボロクソな扱いされてるのは大抵このモデル
イタリアやロシアに39口径40mmビッカース機関砲として輸出された
日本にも輸出され毘式四十粍機銃の名で導入、ライセンス生産された

・諸元(Mk.II, HA砲架)
口径: 40 mm(40×158 R)
全長: 96 インチ(2.438 m)
銃身長: 62 インチ(1.575 m)
砲総重量: 550 ポンド(249 kg) ※冷却水込み
砲弾重量(榴弾): 2.95 ポンド(1.34 kg)
弾頭重量(榴弾): 2 ポンド (980 g)
発射速度: 200 rpm
有効射程: 1100 m
砲口初速: 585 m/s
砲架重量: 1568 ポンド (711 kg)
俯仰角: -5 / +80 度
全周旋回

基本的に単装で使われたが、たまに連装で使われたらしい(そっちのデータは不明)
手動操作のHA砲架の他に動力式砲架も作られたが、重すぎて試作のみに終わる
Mk.II*Cという微改修型があり、この時点で装弾方式が布ベルトから14発のスチール製ベルトリンクに変更された
このベルトリンクは端のホックで連結出来るので写真によっては長いベルトに見える

・画像:連結された弾帯(後述のMk.VIIIのもの)


・QF 2-pounder Mk.VIII


通称:多連装ポンポン(multiple pom-pom)
Mk.IIの再設計モデルで、1930年から配備された
わざわざ旧式砲弾を使う対空砲なんぞ作ったのは第一次大戦で200万発余らせた2ポンド砲弾を消費したかった側面があるから許してさしあげろ
装填は砲を左右から挟み込む形に配置されたマガジンに入ったスチール製ベルトリンクで行ない、8連装砲架の場合再装填なしで73秒の連射が可能だった(一門あたり140発)
まず1921年から1922年にかけ軽巡洋艦ドラゴンにおいてMk.IIベースの6連装砲架が試験され、その後8連装砲架が1928年には巡洋戦艦タイガーにて洋上試験が行なわれた
この8連装銃架では上下に配置された2つの機銃がクランク装置で同期して交互に射撃を行う同期射撃(英:controlled fire)という連射方式をとった
このクランクは手動で回すことから本質的にはセミオート射撃に近いとされる
その動作からピアノガン(Piano-Gun)やシカゴピアノ(Chicago-Piano)というニックネームが付けられていたらしい。紛らわしいな
この複数の砲がクランクで連動する仕組みが一部で言われる「一門でも故障すると全部撃てなくなる」という欠点に繋がるっぽい
その後1936年頃に、8連装砲架を積む余裕のない艦向けに4連装砲架が導入された(冒頭の画像)
1930年台後半になると航空機の発達が進み、古い設計に由来する初速の低さ(600m/s)が問題視され、1937年には弾頭を軽量化して初速を増した(732m/s)高初速砲弾が開発された(画像)


2ポンド砲なのに2ポンドじゃないのは気にしてならない
また砲弾の互換性はない
また同期射撃に特有の「全ての砲が同じタイミングで発砲する為、弾幕に『切れ目』が生まれる」という特徴と前述の故障対策の為に一般的な自動射撃を行なえるようにする改修が1939年頃から開始された
これによって8連装ポンポン砲は
CLV:controlled low-velocity(同期射撃、低初速)
CHV:controlled high-velocity(同期射撃、高初速)
ALV:automatic low-velocity(自動射撃、低初速)
AHV:automatic high-velocity(自動射撃、高初速)
という4つのサブタイプを持つことになった
一方4連装では終戦まで同期射撃を使い続けたので2つで済んだ(良いとは言っていない
いずれのモデルも複雑な内部構造によりメンテナンスが欠かせず、初期不良も目立った
これが良く言われる故障率の高さの原因と思われる
一方充分なメンテナンスがなされた砲の稼働率は良好で、1941年マルタ島のイラストリアスなんかは故障なしで撃ちまくってたりする(8連装AHVモデル)
最後まで曳光弾は用意されなかったが、代わりにレーダー連動照準システムが導入された
というわけで基礎設計の古さを考えれば決して駄作ってわけではなさそう

その後は大口径機関砲の宿命か、1942年頃から徐々にボフォース40mm機関砲に置き換えられていく
元々ボフォース40mmがスウェーデン海軍のポンポン砲Mk.IIを代替する為に作られた辺りにもなんか宿命感ある
一方単装砲架のポンポン砲は比較的軽量でスペースを必要としなかった為、ボフォースが載せられない規模の艦艇では重宝された
特にエリコンSSのストッピングパワーでは落としきれない特攻機に悩まされた東洋艦隊では対策として次々配備された
※エリコンSSの炸薬量は11〜13g

・画像:単装ポンポン砲

実は米軍への導入も一時期検討されたのだが、砲弾が米国での製造に向かないことと同時期にボフォース40mmの導入が検討されていたことが重なりご破算

・砲諸元(Mk.VIII)
口径: 40 mm(40×158 R)
全長: 102.6 インチ(2.606 m)
銃身長: 62 インチ(1.575 m)
砲総重量(LV/HV): 572 ポンド(259.5 kg) / 850 ポンド(385.6kg) ※おそらく冷却水の重量を含まず
砲弾重量(LV/HV): 2.95 ポンド(1.34 kg) / 2.87 ポンド(1.3 kg)
弾頭重量(LV/HV): 2 ポンド (980 g) / 1.81ポンド(820g)
発射速度(CF/AF): 96~98 rpm / 115 rpm
有効射程(LV/HV): 1100 m / 1550m
砲口初速(LV/HV): 600 m/s / 732 m/s
※LV…低初速, HV…高初速, CF…同期射撃, AF…自動射撃

・砲架諸元(8連装Mk.V/4連装Mk.VII/単装Mk.VIII)
砲架重量: 16 英トン(15t) / 8.58 英トン(8.7 t) / 1.78 英トン(1.8 t)
俯仰角: -10 / +80 度(Mk.V, Mk.VII) / -10 / +70 度(Mk.VIII)
全周旋回

ちなみに連装ボフォース40mm砲架(Mark1)は約4.4〜5.8t、同四連装砲架(Mark2)は約10t
単装ポンポン砲架は改良型のMk.XVIでは重量が1.1tとなり、エリコンSS単装銃架の約0.7tと比べてもお手軽さがわかる

・参考/画像
http://www.navweaps.com/Weapons/WNBR_2pounder_m2.php
http://www.navweaps.com/Weapons/WNBR_2pounder_m8.php
http://www.quarryhs.co.uk/37-40mm.htm
それと日英wikipedia他